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大阪高等裁判所 昭和60年(行コ)3号 判決

兵庫県西宮市大市東町三〇番三号

控訴人

久保田喜俊

兵庫県尼崎市名神町三丁目五番一八号

控訴人

芝軒京子

兵庫県伊丹市南野字平塚四一六番六

控訴人

久保田博

右三名訴訟代理人弁護士

平田雄一

兵庫県西宮市江上町三番三五号

被控訴人

西宮税務署長

横田光夫

右指定代理人

森本翅充

同

浅利安弘

同

北山忠男

同

向山義夫

同

岸川信義

右当事者間の所得税更正処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  控訴の趣旨

(一)  原判決を取り消す。

(二)  亡久保田民蔵の昭和五四年分所得税について、被控訴人が昭和五五年九月八日にした更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

(三)  訴訟費用は第一、二とも被控訴人の負担とする。

2  控訴の趣旨に対する答弁

主文と同旨。

二  当事者の主張及び証拠関係

次に当事者双方の当審主張を付加するほかは、原判決事実摘示と同じ(ただし、原判決三枚目裏四行目の「同人」を「民蔵」と、五枚目表三行目の「雑作補償」を「離作補償」と、七枚目裏三行目の「第2項(一)の冒頭の主張」を「第2項(一)(1)の主張」と、同行目の「同項(一)(3)の事実」を「同項(一)(2)の事実」と、八枚目裏未行目の「実測の分筆」を、「実測のうえ分筆」と各訂正する。)であるから、これを引用する。

1  控訴人ら

(一)  地方税法附則一九条の三第一項所定の「市街化区域農地」については、同法附則一七条一号、同法施行令附則一三条二号によつて解釈すべきものとされているが、同号所定の「農地法五条一項三号の届出のなされた農地」とは、同号の届出がなされ、かつ、届出どおりに転用された農地に限るものと解釈すべきである。すなわち、右届出には転用者又は売買等の当事者の住所・氏名・土地の表示・転用計画・施設の概要等を届け出(農地法施行規則四条の二、六条の二)、右許可を受けた者が許可条件に付された期間内に転用事業を行わず、今後もこれを行うことが確実といえないときは許可を取し消しうる(同法八三条の二)ものとされていることからすると、単に農地法五条一項三号の届出がなされただけで転用未了の農地を地方税法附則一九条の三第一項所定の「市街化区域農地」にあたらず、したがつて、租税特別措置法三一条の三第二項所定の「特定市街化区域農地」にもあたらないとして、その後の譲渡による譲渡所得税の賦課にあたり、同条の三第一項所定の軽減税率の運用を否定することは公平を失するものというべきである。

これを本件についてみると、本件農地の転用届出には、昭和四九年九月二〇日から三〇日以内に右農地を無蓋駐車場にするとの条件で右届出がなされているにもかかわらず、右期間内に右転用がなく、したがつて、地方税法施行令附則一三条二号にいう「農地法五条一項三号の届出のなされた農地」にあたらないのであるから、民蔵の右土地のその後の譲渡による譲渡所得税の賦課にあたつては租税特別措置法三一条の三第一項所定の軽減税率が運用されるべきである。

(二)  また、農地法五条一項三号の届出は、農地の転用の届出と権利移転の届出の両者を含んだものである。したがつて、本来は右両方の目的のために届出されるものであるが、いずれか一方の目的のために利用されることがあり、たとえば、農地の転用を目的とせず、権利の移転だけを目的として利用されることもあるのである。すなわち、同法三条による農地の所有権の移転については同条二項五号により許可準備が定まつているので、右基準に達しない者は同法三条によつて農地の所有権を取得できないので、同条に代わるものとして同法五条一項三号の届出をするのであるが、このような場合農地の転用を実行する意思はないのである。

本件において、本件農地の同法五条一項三号の届出は、同法三条に代わるものとしてなされたことが明らかであるから、右届出をもつて本件農地を地方税法施行令附則一三条二号にいう「農地法五条一項三号の届出のなされた農地」ということはできず、したがつて、民蔵の右土地のその後の譲渡による譲渡所得税の賦課にあたつては租税特別措置法三一条の三第一項所定の軽減税率が適用なされなければならない。

2  被控訴人

(一)  租税特別措置法三一条の三所定の特定市街化区域農地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用にあたつては、納税者の税負担の公平を期するためにも法文を厳格、かつ、客観的に解すべきであり、特定市街化区域農地等に該当するか否かは右措置法三一条の三第二項、特定市街化区域農地の固定資産税の適正化に伴う宅地化促進臨時措置法二条、地方税法附則一九条の三第一項、一九条の二第一項、一七条一号、同法施行令附則一三条二号の各法条を厳格に適用して解釈しなければならないものである。

控訴人らは、農地法五条一項三号の届出はなされたが、未だ転用されていない農地は地方税法施行令附則一三条二号の「農地法五条一項三号の届出のなされた農地」に該当しない旨主張するが、「農地法五条一項三号の届出がなされ転用された農地」は「非農地」で、本件特例が適用されないことは明らかであり、このような「非農地」について地方税法附則一七条一号や同法施行令附則一三条二号でことさら規定しているとは考えられず、同法施行令附則一三条二号所定の「農地法五条一項三号の届出された田又は畑」とは、届出はなされたが、未だ転用のない田又は畑のままの農地を指すことは明らかであり、本件各土地がこれに該当することは明らかであるから、右主張には従いえない。

(二)  控訴人らの当審主張(二)は争う。

理由

一  当裁判所も、控訴人らの本訴請求は失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次に控訴人らの当審主張に対する判断を付加するほかは、原判決理由説示と同じであるから、これを引用する。

控訴人らの当審主張(一)及び(二)はいずれも独自の見解であつて到底これに従いえない。すなわち、地方税法施行令附則一三条二号所定の「農地法五条一項三号の届出のなされた農地」とは、まさしく届出のなされた「農地」であつて、その転用を要しないことは、その文意から極めて明白であり、またその実質からみても、右転用を目的として右届出をなしてその許可を得ながら、右転用を怠つていた者が後日これを第三者に譲渡しようとするにあたり、右未転用を理由に再度農地法五条一項三号の届出をしその許可を得て譲渡所得税の軽減を受けられるとすることは著しく条理に反するものというべきであるから、右(一)の主張は採用するに由ないものであり、また、農地法五条一項三号を、同法三条二項五号の潜脱を目的として使用しうるものとは解し難いところであるから、右使用の許されることを前提とする右(二)の主張も採用の限りでない。

二  よつて、右判断と同旨の原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井玄 裁判官 高田政彦 裁判官 礒尾正)

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